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‘インタビュー’

岩谷社長へのインタビューQAにて、「犬派ですか?猫派ですか?」という質問があったのですが、その時の返答はどちらでもなく、鳥が好きなので「鳥派」というご回答を頂きました。

その後、社長室に置いてある鳥関連書籍の話題から、とんでもないディープな話になっていきました…!

 

社長お気に入りの本「世界の鳥の巣の本」

岩谷社長が「本の作りも含めてすごく良い本」と仰っていたのが『世界の鳥の巣の本』。大型本の図鑑なのですが、「鳥の本」ではなく、「鳥の巣」をまとめているというたいへん珍しい本です。

たいへんマニアックな本だけに「たぶん全然売れなかったと思います」とユーモアを交えながら、「鳥の種類ごとに巣を作る場所が違う」「編んで作る巣もあれば土を盛るだけという巣もある」といった興味深い話を紹介してくれました。

岩谷社長は子供の頃から鳥を飼っていたそうで、今でも文鳥をご自宅で飼育されているとのこと。そういう意味では、鳥にたいしてとても愛着があるのだろうと思ったのですが、話はそんな浅いものではありませんでした。

 

「鳥は生物として、人間よりよっぽど完成されています。」

子供の頃から鳥を飼われていて好きだった理由は、空を飛びたかったとか何か理由があるのですか?という我々の問いに、岩谷社長は少し間をおいてから「鳥は綺麗です」「生物として人間よりよっぽど完成されていますよ。」と話し始めました。心肺機能にしても、体の作りにしても、哺乳類とは全然違うのだそうです。

「鳥は心臓にしても肺にしても、遥かに進化している。あの体の大きさであれだけの運動量を私たちはとてもできない。」

そう言われてみると確かにそのとおりです。また鳥の色合いの美しさについても、哺乳類とは全然違うという点で惹かれるのだそうです。

 

鳥は恐竜の子孫、哺乳類は歴史の表舞台に出たばかり

基本的に鳥は恐竜の子孫にあたるのだそうです。約6500万年前に巨大隕石の衝突で恐竜がほぼ絶滅した中で唯一生き残った恐竜の系統群が、まさに「鳥類」だとのこと。鳥=恐竜ということを考えると、約2億年近くの間生き延びていることになります。

対して、人間の祖先はネズミのような哺乳類で、約6500万年前の巨大隕石衝突後に地上に現れた生物だったといいます。体毛が鳥のようにカラフルでないのは夜行性だったからで、恐竜の絶滅後にようやく表舞台に出てこれた、ということを考えると、鳥類と哺乳類には歴然たる差があると言わざるを得ません。

以上のような理由から、岩谷社長は哺乳類である猫でも犬でもなく、恐竜を祖先とする鳥の方が圧倒的に優れているという見解でした。

「現在は歴史上たまたま哺乳類が上にいるだけで、将来どうなるかは分からないです。」岩谷社長は何億年前の過去から、何億年も先の未来までをも含めて生物の進化・変遷を見通せているのかもしれません。

まさか犬派・猫派の話からこんな壮大でドラマチックな話になるとは思いもよりませんでした。

岩谷技研の広い社長室には岩谷社長ご自身が執筆された書籍の他にも、様々なジャンルの本が並んでいました。「この中でオススメの本とかあれば紹介してください!」という我々インタビュアーの無茶振りにも社長は笑顔で受けてくださいました。

天才・岩谷社長は普段どんな本を読んでいるのでしょうか?興味津々です!

 

いきなりの洋書!100年前の気球の絵も

まず岩谷社長が取り出してきた本は、なんといきなりの洋書!

『INTO THE UNKNOWN / STEWART ROSS:Illustrated STEPHEN BIESTY』という本で、「絵が豊富なので子供でも楽しめるでしょう」と岩谷社長。読めないですが(笑)、確かに面白そうです。

 

この『INTO THE UNKNOWN」の注目ポイントは、一番初めに成層圏まで飛ばしたという100年ほど前の気球の絵が描かれているという点です。そんな昔に岩谷社長と同じことを目指した気球があったのは驚きでした。

 

乗り物の分解図が詳細に描かれている本『INCREDIBLE CROSS-SECTIONS』

2冊めも大きな洋書を手に取った岩谷社長。『INCREDIBLE CROSS-SECTIONS』という本で、子供の頃に図書館で借りて読んだことがあったのだそうです。

様々な乗り物や建物の内部が分かるように描かれている「輪切り図鑑」で、どのような構造になっているのかを視覚的に理解できるというもの。

一つ一つの絵がたいへん細かい描き込みがなされており、「こういった本はなかなか見かけない」と岩谷社長。英語がわからなくても、見ているだけでワクワクしてくる本ですね。

そういえば岩谷社長は子供の頃にカメラを分解して親御さんに叱られたというエピソードがありましたが、こういった絵本の影響で中がどうなっているのか知りたいという探究心が培われたのかもしれません。

 

時系列で生物や科学技術の変遷が分かる『IN THE BIGINNING…』

3冊目も同系統の、絵が主体の大型本『IN THE BIGINNING…』。こちらはどんな本かというと…。

 

生物や乗り物、建物や素材、科学といった様々な分野において、時間の変遷の中でどういった進化を遂げてきたのかが一目でわかるというもの。

「一口に理系といっても、歴史や地理や科学は全部重なってくる。科学が歴史を進めてきた例も多くあります。学問は理解するために分けただけで、もともとは一つなんです。それを理系・文系で分けて学んでしまうと理解は半分以下にしかならない。それはもったいないなと思いますね」と岩谷社長。ほんとうに深い見解があるのだなと驚きました。

一般的に理系というと専門を突き詰めていく過程で視野が狭まってしまう印象がありますが、岩谷社長は幼少時代から広い視野で世の中を捉え、様々な分野の深い知識を習得したことで、唯一無二の天才性を発揮されているのだなと思いました。

 

我々一般人でも読める本を…

岩谷社長のオススメ本はどれも素晴らしいですが、いかんせん洋書で読むのが困難。そこで「我々一般人でも読めるような日本語の本でオススメはありますか…?」とお尋ねしてみたところ、「うーん…あんまり無いかも…」とずいぶん悩んだ様子で…(笑)

おそらくご自宅でしたらすぐ出てくるのかもしれませんが、社長室にある本でオススメって難しいですよね。

そして、しばらくの間をおいて出てきたのが「銀河ヒッチハイク・ガイド」という文庫本。「お気楽な内容で面白いですよ」と岩谷社長。

書籍のレビューでは『バカSFの歴史に燦然と光り輝く超弩級の大傑作』と評され、35か国語に翻訳、全世界で約1,600万部が売れたというベストセラー小説だそうです。これは気になりますね。

 

マーフィーの法則!

なんと「マーフィーの法則」が出てきました。1990年代にベストセラーとなったシュールな本で、「失敗する余地があるなら、失敗する」「落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、絨毯の値段に比例する」といったユーモラスな経験則が紹介されている抱腹絶倒の内容です。

以前、江別工場でロープの結び方の講習を行っていた中臺章さんもマーフィーの法則「失敗する余地があるなら、失敗する」を例に出して戒めていたのを思い出しました。もしかしたら岩谷技研内ではバイブルになっているのでしょうか?

 

鳥好きの岩谷社長おすすめ「トリノトリビア」

そして岩谷社長が「これ面白かったですよ!」と笑顔で出してきたのが「トリノトリビア」!タイトルからして面白そうですね。

この本は、『鳥類学者と鳥好きマンガ家のタッグで贈る、読めば道ばたのスズメを素通りできなくなる日本一オモシロイ野鳥の本』とのことです。4コママンガ+解説の2本立てで構成されており、鳥好きもそうでない人にも楽しく読めそうです。

 

そしてこの鳥の本から、なぜ岩谷社長が鳥に惹かれているのかという深く壮大な話になっていくのですが、それについては長くなってきましたのでまた次回ご紹介したいと思います。

ちなにに、岩谷社長が日本の作家さんの中で好んで読むのは遠藤周作さんだそうですよ。

我々、取材陣が岩谷社長に初めてお会いしたのは、2022年3月の江別気球工場竣工披露式でした。岩谷社長の第一印象は「なんて物腰の柔らかい礼儀正しい方!頭脳明晰すぎる!」と今までに出会ったことのないタイプで、つかみどころがないような不思議な魅力を感じたことを覚えています。

その岩谷社長の不思議な魅力を理解するためにもメイトさんや社員さんにインタビューをした際には「岩谷社長に聞いてみたいことありますか?」と皆さんに聞いていました。今回は、岩谷社長の基本情報として知りたいけど・・・お忙しい社長に聞くのは恐縮してしまうような内容をあえて質問してみましたが、簡単な質問からは想像もできない回答が繰り出されました。ここではまず単純なQ&Aをご紹介しますね。

 

短時間睡眠で大丈夫!岩谷圭介の時間術

気球の設計、開発だけではなく、会社の経営など、岩谷社長のスケジュールは分刻み!さらにご家庭では、3人のお子さんの育児と、とにかく忙しく過ごしていらっしゃる印象の岩谷社長に対して

「ちゃんと食事されてますか?寝ていらっしゃいますか?と心配される声が多いです」とお伝えすると「寝なくてもいいタイプなので得してると思います」とニッコリ。平均的な1日のタイムスケジュールを教えていただけますか?

「朝は、3時頃に起床します。」ん?3時は朝ではなくて夜中なのでは?と早速のツッコミどころですが、岩谷社長は4時間ほどの睡眠時間があれば十分なのだそうです。

早朝のこの時間帯はメールや電話、問い合わせをされることがないので、集中して自分の仕事に取り組める貴重な時間です。

7時頃、お子さん達が起きてくると仕事をやめ、一緒にご飯を食べます。

8時に出社し、18時〜19時頃に退社することが多いのですが、
「会社にいるとミーティングがあったり、質問されたりするので仕事ができない」
と言うので、それも大切なお仕事ですよと笑いました。

ご自宅では、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」を子ども達も大好きなので一緒に見るなど、家族の時間を楽しく過ごし1日を終えるのだそうです。

まずは、岩谷社長がいわゆるショートスリーパーと呼ばれる毎日の睡眠時間が短時間でも、健康への影響がまったく無いタイプだということがわかり一安心でした。フランスのナポレオン・ボナパルトや発明家のトーマス・エジソン、芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチらと同じですね。

「奥さんは自分とは違ってよく寝るんです。規則正しくスケジュールに忠実なタイプなので助かっています」と、話題はご家庭の話に・・・

 

集中すると寝食も忘れるタイプ

「好きなことをずっとやっていて、ご飯を食べるのも忘れ、気がついたら朝になってしまうくらい集中してしまう」ことがあるという岩谷社長。ご自身では「不器用なタイプ」と表現されるのですが、そんなに熱中して物事に取り組める集中力と体力がすごいですよね。なので「食事しているところをあまり見たことがない」「生活感がない」と思われてしまうのでしょう。

「奥さんが時間になると食事を用意してくれて、声をかけてくれるのがありがたい」と奥様の話をするときには、とてもニコニコされる岩谷社長。声かけがなければ際限なく集中し続けてしまうので、奥様が自然と生活のリズムを整えてくれているようです。

奥様が作るお料理で好きな物はありますか?と聞くと「こだわりなくなんでも食べる」と言うので、きっと奥様の作るものはなんでも美味しいのですね!

唯一苦手なのが、以前に食べてあたってしまったことがあるカキで、どちらかというと肉派だと教えてくれました。(この肉派の質問からの、動物は犬派?猫派?の話題は、思いもかけない話しに発展するので、別のコンテンツでお伝えします)

 

岩谷社長はお酒を飲むと…?

「お酒は飲みますか?という質問もありました」と聞いてみると、

仲さんが「あまり飲めないけど、飲むと甘えたかわいい感じになって、大好きな奥さんの話をしてのろけたりする」と教えてくれたので、そんな可愛い岩谷社長も見てみたいものだと思いました。

我々インタビュアーの勝手な思い込みでは、岩谷社長はきっとワインの産地や銘柄に超詳しくてかなり飲むのでは?といった印象がありましたがハズレました。きっとお酒を飲む時間があったら大好きな研究に没頭したいという考えなのかもしれません。

 

茶道が結んだ「縁」

「奥様との出会いや馴れ初めが気になる」という質問もありました。これもまた仲さんが、「大学の茶道のサークルで出会って、可愛い子だったので口説いた」と岩谷社長よりも先に答えてくれて、岩谷社長も全く否定しなかったので笑いました。

奥様のどんなところがお好きですか?の質問には照れて答えずらいようでしたので、「どういうタイプがお好きなんですか?」と聞くと「素直で話しやすい子が好き」とのこと。学生時代に岩谷青年の語る夢を奥さんが楽しそうに聞いていたのかな♡なんて想像してしまいます。

岩谷社長が茶道のサークルに入ったきっかけは、ご実家が茶道教室で「祖母と母が茶道の先生をしていた」のだそうです。「甘いお菓子が好き」というのも小さい頃からお茶とともにお菓子が身近にあったからかもしれませんね。

ちなみにご出身の福島県の名産なら「ままどおる」がおすすめだそうです。

※「ままどおる」とは、バターを多く加えたミルク味の餡を生地で包み焼き上げた、 福島県郡山市の菓子メーカー・三万石が製造しているお菓子。お土産品として大変有名です。

 

茶道にはいくつかの流派があり、それぞれ作法が違う部分もありますが、茶道の根底にあるのは、お客様をお迎えする全てにおいての心遣いです。

社長室へと丁寧に迎え入れてくれ、心のこもった対応をしてくれていることに、ずっと感動しながらインタビューをしていたのですが、岩谷社長はナチュラルに茶道の精神をもって「一期一会」の時間を過ごしてくれているのだなと思いました。お話しされている間も常に姿勢が良く、指先まで所作が美しいのも、日頃から茶道を嗜んでいるからなのだと納得でした。

 

子ども時代エピソード

岩谷社長がどんなお子さんだったのか?お母さまにどんな子育てをされたのか?という質問も多く、我々も一番聞いてみたいと思っていたことでした。

講演会で話されていた子どもの頃のエピソードで、お父さんのカメラを分解したという話がありましたが、怒られなかったのでしょうか?

「怒られたと思うけど気にしない子どもでした。今、自分の子どもが自分でやろうと思ったことをやらないと気が済まない様子を見ていると、きっと自分の小さい頃に似ているのではと思う」と、自分の親も子育てで大変なこともあったのでは?と思っているそうです。

 

学生時代に株で稼いで浪人時代の費用を捻出

高校生の頃に株で稼いで、そのお金を自らの浪人時代の費用にあてていたという仰天エピソードがある岩谷社長。それは金融教育として株式投資を親から提案されたのですか?

「ちょうど高校生の頃って、株に興味を持ちませんか? 興味あったので自分でやってみたんです」

なんと誰かからの教えられたり勧められたのではなく、自ら株に興味を持って始めたのだそうです。高校生の頃といえば普通、部活や恋愛に夢中で、多少は将来のことに漠然とした興味は向けるとは思いますが、株で稼ごうとは考えたことなかったです・・・興味の持ちどころが我々凡人とは全く違いますよね。

 

ご両親からは「自分の責任で自由にやりなさい」と良い意味で放任されて育ったという岩谷社長。

とはいえ、子育てはあれこれ言って干渉するより、子どものしたいようにさせることの方が忍耐が必要で大変です。おそらく「この子は大丈夫」と信じて待てる大きな愛情があったから、ご両親も「自由にやりなさい」と言えたのだろうなと思いました。

 

起業について

さて、岩谷技研ではアルバイトの学生も多く、卒業後の将来は多くの学生が企業への就職という進路を選ぶのに対して「起業するって、やっぱりすごい。どうしてその勇気が持てたのか?」を聞きたいという質問もありました。

岩谷社長は大学生の頃にも、プログラミングの知識を活かして起業していたんですよね?

「工学部は実習や実験が多く、限りある24時間の中でアルバイトをして生活費を稼ぐことを計算してみると、自分で仕事を作って会社をやった方が効率が良いと思った」と、淡々と話す岩谷社長。だからと言って、誰もが簡単に会社をつくれるわけではありませんよね・・・。

岩谷社長のやってみるからはじめてみるという姿勢は子ども時代からずっと変わっていないことに感心しました。

 

すべての経験が今に役立っている

高校時代の株式投資の知識や大学時代に起業しようとした時に法律や契約書について、たくさん調べたということが今の会社経営やファイナンスに役立っています。「経験していることをつかっているだけなんです」と岩谷社長。今までの人生の経験値が高過ぎやしませんか?と驚くばかりの我々。

そうした経験の中で、今までで一番嬉しい、もしくは悔しいとか悲しいと思ったことを教えてくださいと聞くと

「感情の浮き沈みがあまりないので」と、出来事に一喜一憂せず「全部通過点でしかない」という考え方をしているのだそうです。失敗は何が悪かったかを教えてくれるから、さらに先に進めると、とてもポジティブです。

それは、感情がないというよりは、感情を素晴らしくうまくコントロールできているということでは?

「モチベーションを保つために、情熱の火を”とろ火”でずっと燃やし続けていきたい」とキラキラした目で語られ、我々も胸がじ〜んと温かくなりました。

 

同じ人間なのに脳のつくりが違うのか?つくりは同じでも使い方が違うのか?岩谷社長は天才すぎやしないか?それよりも心根が美し過ぎないか?そもそも本当に同じ人間なのか?と、我々の理解を超えてしまったので、思わず「宇宙の叡智を教えるために地球にやって来た宇宙人ですか?」と聞いたところ、さすがに困ったような笑顔を浮かべる岩谷社長・・・えっと、では苦手なことはありますか?

「苦手なことばかりですよ〜。新しいことをしていくのが得意ですが、根気のいる繰り返しの作業などは苦手です。だから会社をつくったんです」と自分が苦手なこと、できないことでも、それを得意とする人、できる人がいる。一人では難しいこともみんながいれば実現できる! 隣にいる仲さんも笑顔で頷きます。

 

「気球による宇宙旅行」を目指すというイメージから、ふわふわしたつかみどころのない雰囲気を感じていましたが、岩谷技研にあるものは、アイデアや思いを実現するための確かな技術を生み出す一人ひとりの努力と働きなのだと、岩谷技研で働く皆さんの顔が思い浮かびました。気球を開発したことも素晴らしいですが、それを作る会社を作ったことが、まず本当に素晴らしい!と改めて感じたインタビューとなりました。

 

皆さんの素朴な質問に対する岩谷社長の回答のどれもが、経験と知識に基づいて素晴らしく深イイ話になって返ってきました。「コストパフォーマンスを計算して数字を人にわかりやすく伝えるのは得意かもしれません」とお話ししてくれたことが、たくさんあります。

引き続き総力特集!岩谷社長インタビューの続きをお楽しみに!!

札幌市北区にある岩谷技研の本社を訪ね、岩谷社長にお会いしてきました。お話は、2023年の岩谷技研の事業についてから始まり、メイトさんや社員の皆さんからの「岩谷社長への素朴な質問」への回答。さらにそこから話題は、生物の進化や恐竜時代、人類の歴史、星の寿命の話・・・と宇宙規模に広がっていきました。

岩谷社長の言葉の一つひとつが興味深く、面白く、知識と新しい視点が増えるような内容で、視野が拡がったと感じたこの感覚。「地球を外から眺める体験をした宇宙飛行士達が、帰還後に大きく価値観を変え、生き方を激変させた」というのと同じ体験だなと思ったほどです。

約2時間ほどのインタビューは、岩谷社長と共に宇宙空間を旅していたような、楽しい素晴らしい時間でした。

今回はその中から、「2023年の取り組みと目指すもの」について語って頂いた内容をご紹介します。

 

宇宙の入り口に新しいフロンティアを拓く

2022年は、2月の岩谷技研初の有人飛翔試験の成功を皮切りに、5月には無人の気球に無線機を積んで高度30キロまで飛ばし地上との通信を検証する実験にも成功。6、7、8月と係留ロープ付きでの有人飛行実験を繰り返し、9月にはついに係留ロープなしでの自由飛行試験に成功。十分な安全が担保されたことを確認し、11月には目標高度100mを超える102.3mまでの有人飛行に成功しました。まさに技術の開発と進歩が目覚ましい躍動の1年!となりました。

「今年はさらに実証実験をどんどん進めていきます。重要な年になるでしょう」と岩谷社長。

2023年は、社員を含め実験志願者の方に協力してもらい、有人飛行を可能な限り何度でも行い、4km、10kmと高度を引き上げ、秋までには最終目標高度である25kmに挑戦する予定です。

「はい!私が志願者です」と言わんばかりに、横でずっと手を挙げている取締役の仲さん。昨年、江別市で開催された大麻地区自治会長役員研修会での講演会では「体重オーバーでまだ乗れていない」とおっしゃっていましたが、キャビンに乗り込むのに体重制限があるのでしょうか?

岩谷社長:「体重制限があるわけではないですが、エレベーターの重量制限のようなものだと考えてください。2人用のキャビンなので、例えばお相撲さんのような体格の人が2人乗ると、やはり窮屈になってしまいます。仲さんは相撲取りのように重たいわけではありませんが、できれば、20%〜30%くらい減量をしてもらいたいです」

仲さん:「自分が軽いからって!!・・・20%も減らすのはムリ!」

岩谷社長:「ではせめて、10%お願いします」

実験隊長の及川さんが「1kgのものを浮かせるためのヘリウムガスが約5,000円」と言っていました。体重が約60kgとするとヘリウムガス代は30万円の計算になります。1キロでも2キロでも軽い方が経費削減できますよね。

本当に気心知れた間柄というような岩谷社長と仲さんのやりとりを聞きながら、私もいつか気球に乗る日のためにダイエットをしておこうと密かに決心しました。

 

それはさておき、最終目標高度への有人飛行実験が成功すれば、いよいよ宇宙への旅が開始されるんですね!

「実験に成功しても試験的に作ったプロトタイプから、安全で快適で誰でも利用できるようにするために、これからまだやることがあるので、実用化には時間がかかります。ライト兄弟が有人動力飛行に成功したからといって、旅客機が一般的に広く使われるようになるには年月が必要でしたよね」と、お相撲さんやライト兄弟とわかりやすい例を出し、イメージしやすいように話をしてくれるところに、岩谷社長の優しさとユーモアを感じます。

 

宇宙旅行だけではない気球の可能性

「気球は宇宙旅行だけではなく、いろいろな活用ができます。有人に限らず、無人で宇宙へものを運ぶこともできますし、わざと低い高度を飛ばして作物の生育状況を確認するなど農業に活用することも考えられます」

実際に気球は民間企業や大学で宇宙物理学、天文学、気象学など様々な分野での科学観測や、工学実験にも利用されています。

現在、岩谷技研の気球は、最大300キロの重量物を高度30キロ程度の成層圏まで運ぶことが可能です。唯一無二の開発製造技術で要求に見合った気球の設計を行い、それを自社の気球工場で製造し、打ち上げの運用・回収までをフルサポートする「ワンストップサービス」の提供も始めました。

ふうせん宇宙撮影から開発を進めて、気球で宇宙遊覧フライトができるようになるだけでも凄いことなのに、気球がそんなに利用範囲の広いものだったとは!

 

宇宙よりも深海のほうが簡単

そういえば以前、空の技術は深海にも活かすことができると言っていましたが、岩谷技研は空だけでなく海でもできることがありそうですよね?

「宇宙に比べれば、深海は簡単です。水の中は飛行機が飛んでるわけではないし、深海には航空法のような法律はありませんからね」と、すぐにでも何かできそうな勢い。

「深海は沈めればいいので頑丈で重いものを作ればいい。ひもを付けておけば回収も簡単です。空は頑丈だけれども、浮かせるために軽いものを作らなくてはいけないので難しいのです」

現実的には、今の段階では気球の宇宙遊覧の実現が優先ですから、深海のことは考える時間がない状況ですが、「宇宙旅行の実現で終わりではなく、もっと世の中や社会の役に立ちたい」ということを繰り返し何度もおっしゃっていました。

 

アイデアや可能性、できることはたくさんあるけれども、岩谷社長は今一番やるべきことにエネルギーを結集し、着実に歩みを進める2023年にすることを見据えているようです。

さらに岩谷社長の心の中には、まだ我々には明かされていない「夢の果て」があるように感じました。

話はまだまだ続きます「岩谷社長への素朴な質問」の回答は、また次の記事で!

R&Dのデスクを見学させてもらった時に、不思議な植物を机の上に置いていたのが、橋本航平さんでした。「苔テラリウムの元気がないので、光を当てているんです」と教えてくれ、とても心の優しい方なのだろうなと思いました。

ものづくりの根幹に関わることができる喜び

2022年5月に岩谷技研へ入社したという橋本航平さん。函館高専の機械工学科出身です。岩谷技研は3社目となり、最初はテレビの設計などのものづくりの仕事をしていましたが、次の会社では、パソコンに向かってシミュレーションをし、業務効率化のための解析関係の仕事をしていました。

やっぱり自分は、手を動かして作るのが好きだと思い「また作る仕事がしたい」という気持ちになっていた頃、おもしろい会社があるなと岩谷技研のことを知ります。宇宙にも興味はある、夢がある仕事だと惹かれるものもあり、採用試験を受けてみました。

設計、企画、プランニングをし、実際に作って、動かしてみる。思い描いたものができあがった時が楽しいと笑顔でお話ししてくれました。

そんな橋本さんが作ったものを見せてもらいましたよ。

 

天井弁の開閉を制御するスイッチボックス

今回、見せていただいたのは開放弁の開閉動作を遠隔操作する装置です。無線基盤の中の電気の部分は山本さんが担当し、電子課として共同作業で開発しました。

「このスイッチボックスから電波を無線で飛ばすのですが、動作がわかりやすいようにLEDで光るようにして、開いた時には、音が出るようにもしたんです」

岩谷技研のロゴも入っていて、未来的なデザインがかっこいいですね!

「最初は余力がなく、まずは動けばいいと考えて、デザインは度外視してました。
でも、テレビの取材なども入ることがあるので、写った時にかっこいい方がいいと考えて、デザインにもこだわるようになりました」

使いやすさのほかに、カッコ良さも意識してデザインを考えるようになったのは、岩谷技研の制服や、江別気球工場内の機能的かつ美しいデザインやカラーなどの影響もあるのだとか。

 

そもそも、橋本さんご自身も木工品を作るのが趣味で、自宅に工作部屋があり、希少木材を使って作ったペンや指輪などの作品の写真も見せてもらいましたが、どれも素晴らしく美しいものでしたよ!

ところで「自宅に工作部屋があるなんて、すごくないですか?」という話から、橋本さんが気にしていることの話題となりました。

 

福島研究所の立ちあげのため福島へ行く

実は11月末から福島県の南相馬市へ行くことになった橋本さん、これから本格稼働する福島研究所をものづくりの拠点とすべく、立ち上げに尽力されています。

福島では、事務所に3Dプリンターやレーザー加工機などの工作機械関係の機材や工具を買ってもらうことをお願い中なのだと話してくれました。

「機材設備にかなりのお金がかかるので、見合った成果を出さないと!」と気持ちを引き締めているのだそうです。

お話を伺って思わずこちらもブルっと気合が入ってしまいました。きっと良い仕事をされると思いますので、岩谷社長!機材や工具の購入をよろしくお願いします!!

R&Dセンターの機能が江別気球工場に移され、工場内の一角に開発部門のメンバーのデスクが並べられています。どんな方がどのようなお仕事をされているのか?
まずは、実験責任者である及川明人さんにお話を聞きました。

 

隊長と呼ばせてください!

取締役の仲さんから「実験隊長です」と紹介され、役職に隊長という肩書きがあるとは、さすが先進的な岩谷技研と感心し、「隊長!よろしくお願いします」と挨拶すると「隊長ですか?」と若干困惑気味な及川さん。どうやら、隊長と呼んでいるのは仲さんだけで、正式には「実験の責任者です」と自己紹介していただきました。

それでも、「責任者」という肩書きよりも「隊長」という呼び名がカッコいいと思うので、隊長とお呼びしたいと言うと、多少苦笑いのような表情を浮かべながらもOKしてくださいました。

それでは隊長!さっそくですが実験について教えてください!!

 

実験で一番大切なことは、それは…

岩谷社長や仲さんの講演会で「気球で宇宙旅行を実現します」と言葉で説明しても会場のみなさんは半信半疑な様子で聞いているのですが、「できますよ、ということを見せるのが一番いい」と岩谷社長が言うように、実験の様子のVTRを観ていただくと、百聞は一見にしかず!気球で本当に宇宙に行けるんだ!と、皆さんの表情がみるみる変わっていきます。

実験は、開発した装置が正しく作動するかどうか、理論や仮説が正しいかどうかを確かめるだけに留まらず、岩谷技研の行っていることを、多くの人にわかりやすく伝えることもできる重要なものなんですね。

 

さて、そんな実験のVTRを観ていると大勢のスタッフが関わり、作業をしている様子が映し出されていますが、実験を行う上で、大切なことというのはやはり「チームワーク」なのでしょうか?

「チームワークも大切ではあるのですが、一番大事なのは事前準備なんですよね」と及川隊長。事前準備がしっかり行われたかどうかが実験を成功に導く鍵だということです。さらに、その事前準備を今までの実験では、及川隊長がほぼ一人で行っていたというので驚きです。

回を重ねるごとに実験の規模が大きくなってきているので、経験や技術を他のメンバーに伝えていく必要を感じていて、それが今後の課題であると考えているのだそうです。

 

実験、実験…、ストレス解消は子供と遊ぶこと

2022年は、無人の気球を高度30キロまで飛ばし地上との無線通信を検証する実験、高度100メートルの有人飛行など、重要な実験がたくさんありました。

実験の準備をし、実験して、実験後の後処理をし、さらに報告書を作成する。実験後はできるだけすぐに報告書を上げたい、一ヶ月も二ヶ月も経ってしまっては、実験の鮮度が落ちてしまいます。

なので、忙しくてゆっくり休む暇がないのが辛いところだそうですが、休みの日は、7歳と5歳のお子さんと遊ぶのが楽しくストレス解消になるのだそうです。

岩谷技研で働く前は、静岡で会社勤めをされていましたが、元々は北海道石狩市の出身で、子育てのために北海道に戻ってきたかったという優しいパパさんの笑顔を見せながら、お話ししてくれました。

 

成層圏への有人飛行の実験

ところで、冬の間は実験の回数が減るのでは?確か、気球を海に着水させるのに適した季節は5〜6月、9〜10月だと聞いたことがあります。

「気球を飛ばすには、天気や風待ちなど、自然環境に大きく左右されますが、冬だと北海道の場合は畑が雪に覆われ、気球を雪の上に降ろしてOKとなるので道内で実験ができるんですよ、冬はとにかく寒いですけどね」と教えてくれました。

2023年は、高度25キロへの気球の有人飛行の実験を行います。25キロ辺りになると真空状態の氷点下80度となり、地上との温度差は約100度となる過酷な環境になります。

岩谷技研では、大きな圧力がかかっても耐えられる繊維強化プラスチック製気密キャビンを開発しましたが、これからさらに有人飛行実験を100回は行う予定で、安全性の精度を99%以上まで高められたことを確認するのだそうです。

隊長、今年も忙しくなりそうですね・・・

「大変ですよ〜」と言いながらも、実験を重ねる度に宇宙旅行の実現へと近づいていっている、そんな確信とやりがいを及川隊長の表情から感じ取ることができました。

開放弁の開閉を遠隔操作する装置の電気の部分を担当した、電子課 課長山本一将さんにお話を聞きました。

 

札幌で宇宙開発に携われるなんて

2021年12月に入社されたという山本さん。前職ではパソコンの電子機器を設計していました。その時に自社製で無線のマウスを作ったこともあるので、「今の仕事にその経験を活かすことができている」と感じています。

山本さんは、北海学園大学電子情報工学科を卒業後、ずっと札幌で働いていました。

安定したお仕事をされていたなかで、岩谷技研の求人を目にした時に「札幌で宇宙開発に携われる会社があるなんて!」と、宇宙の仕事は東京でしかできないと思っていたのに、自分も宇宙開発に関われるかもしれないと新しいチャレンジをしてみたいという気持ちになりました。

「学生時代も学科に関係なく天文学の講義を取って受けていたんですよ」というくらい宇宙が好きだという山本さん。お子さんの名前にも「星」の漢字が入っていて、ご自宅にも天体望遠鏡があるのだそうです。

まだ、岩谷技研に入社できるかわからないタイミングでしたが、岩谷社長の絵本「うちゅうはきみのすぐそばに」を購入し、「お父さんの働きたい会社の話だよ」とお子さんたちと一緒に読みました。小学2年と年長の二人のお子さんは「風船で宇宙に行けるわけない」と言ったそうですが、お父さんが岩谷技研で働き始めるようになった今は、ときたま「気球にはいつ乗れるの?」と聞いてくるのだとか。

山本さんは「子どもを気球に乗せる」ことを目標に仕事に励んでいるのだそうです。

 

開発・設計は自分の子どもを乗せている設定で行う

大好きな宇宙と関わり、お子さんの夢を叶えるために新しいものを作る仕事は、おもしろくて、毎日楽しいと感じられているのでは?と聞くと、

「仕事をおもしろいと思っているうちは、まだ追い込みが足りていないという以前の会社の上司の言葉を思い出すことがあります」と、今の仕事はおもしろいと感じていると同時にやりがいと大きな責任を感じていると話してくれました。

無線通信のノウハウの蓄積や経験のベースがあったから、今回の開発も取り組みやすいと思ったそうですが、生半可な考えではダメだと考えています。

この機械で行う開放弁の開閉の動作は、上空に浮かんでいる気球を満たしているヘリウムガスをゆっくりと外に逃がす役割を持ち、気球を地上に戻す働きをします。

開放弁を遠隔操作する中で、例えばパソコンの無線のマウスなら2〜3秒動かなくても、あれ、調子が悪いかな?程度で、さほど気にしないかもしれませんが、人の命を乗せている気球で、2〜3秒動かないことを「まぁいいや」で済ませるわけにはいきません。安全面で迷った時は、「これで子どもを乗せられるか?」と自問自答するのだそうです。

 

無線?回路?魔法だと思っていました

開発という仕事では、お手製で機械を作ってみて動くことを確認するという作業を、失敗がないように何度も行うのだそうです。

「まず回路図をお絵かきして、CADのソフトで書いたものを、自分たちでハンダづけしたものがこれです」と、機械や理数の知識がほぼない取材陣にもわかりやすいようにやさしい言葉を選んで説明してくれた山本さん。

無線のマウスもそうですが、テレビのリモコン、照明のリモコンなど無線で操作できる機械は色々あります。中身の仕組みのことまで考えたこともなく、当たり前のように便利に使っていましたが、よく考えると、身の回りには人間が頭で思い描いたものを作り上げて、実際に使っているものばかり!山本さんの説明を聞いて、魔法のように動く機械も全て人間が作ったものだった!と、改めて気がつき感動しました。

我々一般人から見たらどれも魔法にしか見えない一つ一つの技術が積み重なって、それが岩谷技研の気球、そして宇宙へ繋がっていくのですね。

「彼は、岩谷技研で一番いい体格をしています」と仲さんに紹介いただき、思わず見上げてしまう身長180センチのスポーツマン体型の森本千誠さん。入社の経緯と今の仕事についてお聞きしました。

 

経歴や才能よりも行動する人が求められている

熊本出身の森本さんは、小学3年生から柔道を始めて大学時代は柔道部の主将も務めました。現在も柔道部のコーチをされています。北大では、鉄やアルミの研究をしていたそうです。卒業後は「北海道は涼しくて過ごしやすい」と、JR北海道に就職しメンテナンスの仕事をしていました。5年ほど働いた頃、一度、違う世界も見てみたいと思うようになりました。

ちょうどその頃、新聞で岩谷技研の記事を読み「こんな会社があるんだ」と関心を持ち、社員募集中だったので会社見学を申し込んでみたところ、本社と当時は北24条にあった札幌R&Dセンターを見学でき、岩谷社長と直接話すこともできたのだそうです。

その時の岩谷社長の印象はいかがでしたか?

「信じてやり続けてきた人。ものづくりで起業する人ってこういう感じかぁと思いました」

こういう感じって具体的にどんな感じですか?

「いい意味で、世の中の常識から外れているという感じですね」

わかります。宇宙が好き、ものづくりが好きという気持ちにまっすぐな印象ですよね。

 

さて、岩谷社長の話を聞く中で、業務内容は決まっていないことが多くマンパワーでやっているということ、試してやってみて考えていくことを大事にしていること、経歴や才能よりも行動する人が求められているということで「やってみよう」と思ったと言います。

森本さんも大企業にお勤めしていたのに、決まっていないことが多い未知の会社でやってみたいと思うなんて、世の中の常識から外れたタイプなのでは?と思いましたが・・・類は友を呼ぶ? 気持ちが真っ直ぐ純粋で、チャレンジ精神が旺盛な、行動力のある方が自然と集まるのが岩谷技研なのかもしれませんね。

 

仕事もまずは「やってみる」

2022年5月に入社し機械課に所属しています。正直、今はまだ大変だと思うことが多いのだそうです。

「大変なことが苦しいことかと言われるとそれはまた別の話で、柔道の技を覚える時にも、実際に体を動かしていないと覚えられないんです。仕事もやりながら覚えていく、日々自分が前に進んでいると思えています」と、さすが柔道家らしい言葉。

柔道の技も頭で考えているだけでは習得できず、動いていると頭ではなぜできたのかわからないけど、ある瞬間できる時があるのだそうです。柔道も仕事でも考えているだけでなく、手を動かす、行動を起こす、「やってみる」から始めることはとても大切なことなんですね。

 

機械課ではどんな仕事をされているのですか?

及川課長とともに実験の準備を行いますが、人や時間、資金や資材など限りのある中で過不足なく用意するのが「必要なものを全部想像するけど及ばないことがあり難しい」と感じているのだそうです。

他には、キャビンの中に何を置くかの設計もしています。欲しいものは多いが、空間も限られています。新しいものを作り上げることと、安全性を両立する難しさの中で、何を乗せるかの取捨選択が必要です。

例えば、スイッチ一つをつけるにしても位置はどうするか?素材や材料は?と考えることが山ほどあるのだそうです。

 

ストレス解消は「丁寧な暮らし」をすること

環境が変わり、まだ慣れないことも多い中で責任重大な仕事をされているとストレスを感じる時もあると思うのですが、気持ちを切り替えたり、リラックスしたい時にやることはありますか?と、聞いてみると

「洗濯や掃除をしたり、料理をしたりと丁寧に暮らすことを意識すると、日々の生活の中でリラックスできます」との答え・・・よくよく話を聞くと結婚一年目の新婚さん♡「料理は自分の方が得意なんですが、片付けは妻が得意なんですよ」とすっかり惚気られてしまいました。

「江別工場も皆さんが綺麗に使っていて整理整頓されているので、働きやすいです。この美しさを保つためにも片付けは大事ですね」と、確かに汚い所よりも、整ったキレイな環境の方が気持ちよく働けて、仕事がはかどりますよね!

そう言われて、改めて工場内を見回してみると、ここが、これまでは世の中になかったものを、次々と生み出すために、「やってみる」仲間がたくさんいて、風船で宇宙へ行く未来に一歩一歩近づいている特別な場所だということに胸が熱くなりました。

取材日程調整でメールのやり取りをして頂いている小川順子さん。小川さんのメールからはいつも、さり気ない配慮と優しさが感じられます。そんな小川さんが普段どんなことを考えていらっしゃるのか、じっくりインタビューをさせて頂きました。

 

江別の印象はいかがですか?

小川順子さんは、本社の総務・経理部と工場の生産管理部を兼任されています。

「変化がよくある会社なんですよね」と、江別気球工場が稼働し始めてから、江別に通勤していた小川さんも11月から札幌本社に戻るのだそう。そして、江別気球工場には札幌R&Dセンターから数名が来て、開発の仕事の一部をここでするようになるんですよと教えてくれました。

「変化」というか常に「進化」している感じですよね。去年の秋は18人くらいの会社でしたが、現在では総勢50名以上の「チーム岩谷技研」が日夜開発に励んでいます。

緑や自然が好きなので、江別は緑も多く気に入っていたという小川さん。江別気球工場も札幌本社や札幌R&Dセンターに比べスペースが広いので、江別は開放感がある場所という印象があるそうです。

工場での様子も、みなさんが今まで経験のない気球制作というお仕事をされているなかで試行錯誤されているけれども、「ああしよう、こうしよう」ってお喋りしながら工夫している様子が和気あいあいとしていて、そんなメイトさんの明るさに助けられていると感じています。

 

岩谷技研の仕事のやりがいは?

小川さんの主な仕事は採用業務。人事の面から研究開発を支えます。小川さんご自身が岩谷技研に入社したのは2021年の秋頃。当時は岩谷技研という会社を全く知らなかったそうですが、人とのつながりで紹介してもらい働き始めました。

小川さんにとって岩谷技研は3社目で、最初の社会人経験は農協でのお勤めでした。10年以上のキャリアがありましたが、民間の会社でも働いてみたいと考え転職。ずっと採用業務に関わってきましたが、民間会社ではスピード感の違いや女性にもチャンスがあると感じたそうです。

 

さらに岩谷技研では、大きく考え方が変わったことがあるそうです。

一般的な会社では、コミュニケーション能力がまず大切と考えられています。小川さんも以前の経験から「コミュニケーション能力」を重視していましたが、工学系の採用では、コミュニケーション能力よりも「スキル」が重要と考えるようになりました。工学の技術や知識についてはよくわからないので、面接ではエンジニアにも同席してもらいます。

スキル以外の部分で、小川さんには、本当にここで働きたいと思ってくれる人、やってきたからこそ自信がある人から感じられるキラリと光るものがわかるのだそうです。

「経験と感覚ですが、やっぱり思いの強さって伝わるんです」。そうして入社された方がご自身の能力を発揮して、イキイキとお仕事をされている様子を見ると本当に嬉しいそうです。

 

「採用はお見合いみたいなもので、ダメな人っていないんです。会社にマッチするかどうかなんですよね」と、ご縁があったからこそ一緒に働くようになるのだと考えています。採用業務では、そうしたご縁に出会えるのが楽しいとやりがいを感じています。

 

最後の旅行はやっぱり宇宙?

十勝、帯広畜産大学出身で、登山、ボルタリング、旅行が趣味という小川さん。気球の宇宙遊覧旅行には、ぜひ行きたいのでは?というと「昔から人生最後の旅行は南極かなと思っていたので迷っている」という意外な答え!でも、よく考えると日本から南極大陸への距離は約14,000km。直行便もなく乗り継ぎを重ねて飛行時間は20時間以上。かたや宇宙遊覧旅行は、地上から25km・・・宇宙の方が近いですね、と笑いました。

今後も進化し続けていく岩谷技研は、多くの人材を採用していくことになりますが、「私が最初の面接者として応募してきてくれた人と接することになるので、どういう人か表情を見て安心してほしい」と素敵な笑顔を見せてくれました。

 

取材陣をいつも笑顔で迎え入れてくれる飯塚工場長。社内報作成の取材にあたり、江別工場に潜入し、メイトさんにも直接お話しを聞きたいとお願いしたところ、
「まず、私からメイトさんに社内報の件を説明させてください」と、何よりもまずメイトさんの働きやすさや感情、モチベーションを第一に考えていらっしゃるんだなと感心したことを覚えています。

そうして段取りをしていただいたお陰で、いつ江別工場を訪ねても、みなさん快く迎えてくれるので、我々も取材に行くのが楽しいです。

 

仲取締役との腐れ縁?

それはさておき、東京から単身で北海道に移住され、江別気球工場の工場長を務める飯塚剛さん。「岩谷技研で一緒に働いてほしい」と仲取締役から熱烈なオファーがあったと聞きましたが?

「彼とは腐れ縁です(笑)。前職を退職後、タイミングよく岩谷技研に迎え入れてくれるという話をいただき有り難かったし、子どもも成人したタイミングでちょうど良かったんです」

飯塚工場長と仲取締役は、小学校と中学が一緒で、高校は別々の高校に進学しましたが、大学時代には留学先がお互いにニューヨークだったため、再会しずっと縁が続いているのだとか。

「来てみて本当によかった」と北海道に来なければ出会えなかった人たちと、今こうして一緒に仕事をしていることが自分の財産になっていると言います。
江別工場がある大麻地区の飲食店『開拓うどん』がおいしいと、お気に入りの店も見つけたようです。

 

それでも、ご家族を東京に置いてきて寂しいと感じることはありませんか?

「便利な世の中になりましたよ」と毎日のようにFaceTimeで朝晩30分ほど会話をするので距離はあまり感じないそう。2〜3ヶ月おきに東京に帰り、会うのがちょうど良いと感じているそうで、奥様もいずれ北海道に遊びに来ることを楽しみにしているようです。

 

どんなお父さんか?お嬢さんに聞いてみた

さて、夏休みにお父さんを訪ね、初めて北海道に来たというお嬢さんからもお話を聞いてみましたよ。

「父から江別気球工場の話を聞いていたので、みなさんにお会いするのが本当に楽しみでした!温かい雰囲気で家族のように迎え入れてくれて、嬉しいです。話に聞いていたとおり」とハツラツと明るくとても可愛らしいお嬢さん。

 

お父さまが北海道に行くと聞いた時には寂しさがあったのではないですか?

「11月から北海道に行くということを10月に聞いたので、急でびっくりしましたが、父と雷太さんは昔からの友人なので、ずっと岩谷技研の話をしていたのは知っていて、『人をまとめるのが上手だから来てほしい』と言われていたようです」

「自分も成人して、自立するタイミングだったので家族がそれぞれ別の場所で暮らしていますが、毎日FaceTimeを使って会話しています」
「父は、一緒に働いている皆さんから学ぶことが多くて、出会えたことに感謝している。といつも言っています」と教えてくれました。

家族みんなが同時に人生の新しいスタートを切ったようですね、会話も多いようで、とても仲の良いご家族なんだなと感じました。

「父は話をするのが好きでずっと喋ってるんですが、母と私は聞き流してる時もありますよ」「ここでも、みなさんがずっと父の話を聞かされているんじゃないかしら?」茶目っ気たっぷりに冗談を言う姿がとってもキュートでした。

そんなお父さんの一番好きなところはどこですか?の質問には、一瞬、真剣な様子で考えてから、

「私はひとりっ子なので、甘やかされて育ってきたと思うんですが、小さい頃から子ども扱いしないで、対等に接してくれたところです」子どもだからといって、まだわからないだろうと適当にしたりせず、わかるように本当のことを伝えてくれたことに感謝しているそうです。

 

学歴も国籍も年齢も関係ない

飯塚工場長は、「学歴も国籍も年齢も関係ない。学生で自分よりも年下だからと言って下に見るなんてこともないです。メイトさんは20代後半から60代まで、年齢の幅も広いです。みなさんに対して敬意を持って接するだけです」と、大切だと考えていることを話してくれました。

人の心を掴むのがうまいと言われる工場長に、そのテクニックを教わろうと思って聞いていましたが、それはテクニックではなく、信頼される人柄と誠実さがあるからなのだと、お嬢さんにもお話しを聞いて確信しました。