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‘江別研究所’

大学時代には、名古屋大学の公認サークル「名古屋大学宇宙開発チームNAFT」に所属していたという研究開発部 機械課1課の橋詰望宇(はしづめ のぞむ)さんのお話を聞きました。

 

宇宙分野に関わる仕事がしたかった

2023年1月に入社したという橋詰さん。「まだ、わからないことが多いのですが、大変さが少しづつわかってきたタイミングです」と正直に答えてくれました。

「メイトのみなさんからも設計についての質問があったり、すごい!と思います」と、今はまだ指示をもらい仕事を行い実験の計画段階から、実施までの流れを覚えている最中ですが、早く自分から進んで動き、開発にも携われるようになりたいと、目の前にある仕事の一つ一つに取り組んでいます。

橋詰さんは、東京でディスプレイなどのCAD設計をする仕事をしていましたが、小さい頃から宇宙が大好きで、やはり宇宙分野の仕事がしたいと転職活動をしました。

宇宙開発を事業として行っているのは、ほとんどが大手の企業。運良くロケットなど宇宙機器の開発や設計、製造を手掛けることができても、それはごく一部の部品だけということが多いそうですが、岩谷技研を知り、ベンチャー企業なので全ての開発を自分たちの手でできるところに魅力を感じたそうです。

橋詰さんの出身は高知県ですが、両親の転勤で日本全国各地の様々な地域で暮らした経験があり、初めての北海道ですが思っていたより住みやすいと感じています。

 

名古屋大学公認サークル、宇宙開発チームNAFTとは

中学・高校・大学と「スペースバルーンをあげるサークル」に所属していたという橋詰さん。大学時代は学生の力でハイブリットロケットの打ち上げや、スペースバルーンの打ち上げ、一般の方に宇宙を身近に感じてもらうための宇宙教育活動などを行う名古屋大学の公認サークル「宇宙開発チームNAFT(ナフト)」で活動していました。名大のNAFTといえば、かつて岩谷技研が開催した「宮古スペースバルーンコンテスト」にも出場した実績があります。

橋詰さんが、ふうせん宇宙撮影の第一人者である岩谷社長の元で働くことになるとは感慨深いものがありますよね。

岩谷社長は、宇宙の楽しさ、身近さを子どもたちにも伝えたいと、「ふうせん宇宙撮影」プロジェクトで開発した専用パラシュートを子どもたち自らに作ってもらう「宇宙パラシュート教室」を開くなど、バルーンのノウハウを公開し、誰もが参加できる宇宙体験の機会を提供してきました。

橋詰さんのお話を聞いていると、宇宙パラシュート教室やコンテストでの経験を通じ宇宙や科学への興味を深め、挑戦すること!失敗すること!の大切さを知り、「やってみやたい!」と夢を持つようになった若者が、きっと他にも沢山いるのだろうなと胸が熱くなりました。

ところで、橋詰さんがそもそも宇宙を好きになったきっかけは?と聞くと、驚きの回答が返ってきましたよ。

 

もっと宇宙の話をしましょう!

「祖父がUFOの写真を撮っていて、宇宙の本も書いていた」と、さらりと言う橋詰さん。自分の名前にも「宇」の文字が入っているし、撮影されたUFOの写真を見て宇宙が大好きになり、宇宙人はいると確信しているのだそうです。
我々取材陣も宇宙人はいると思う派。えーーーー!UFOの写真ですか?! ぜひ見たいし、宇宙人とも会ってみたい!会えたら友達になりたい!と盛り上がりました。

インタビューの時には「宇宙は好きですか?」と必ずみなさんに聞くのですが、意外なことに宇宙が大好きで岩谷技研で働きたかったと答えるよりも、モノづくりが好き!新しい経験が好き!という方が多いんです。そもそも一般的に宇宙に関わる機会は少ないので、宇宙への興味が第一ではないのは仕方のないことかもしれません。

「みなさんともっと宇宙の話をしてみたいです」と言う橋詰さん。無限の可能性と魅力を秘めた宇宙に少しでも近づきたい!太陽系の外まで行ってみたい!と言います。

「Near Sapceでの宇宙遊覧を多くの人が体験すれば、もっと宇宙に興味や関心を持つ人が増えると思います」そのために岩谷技研でできることをして、宇宙が好きな人を増やしていきたいのだと話してくれました。

機械課に所属する伊藤智範さんにインタビューを行いました。

伊藤さんは、2022年1月に岩谷技研に入社。前職では自動車関係の会社で、CAEシミュレーションによる安全解析などに携わっていました。

岩谷技研に入社してからは、実験の計画・実施・報告書の作成・結果の分析などを担当しています。

伊藤さんはバイオリンとベースが弾けるという多彩な方で、また「人と違うことをやりたい、人と同じことはしたくない」というタイプであると教えてくれました。そんな彼が転職先に岩谷技研を選んだのは、世界的に見ても珍しい事業であるという点で、「スパイスが効いている会社」と独特の表現で心境を語ってくれました。

 

パイバルおじさんの誕生

新入社員松本さんの実験レポート記事「風を読む!カラフルなゴム風船の正体」に、伊藤さんの実験での活躍が描かれております。こちらの記事内で「パイバルおじさん」として登場し、その愛称は社内でも話題になっているとのことです。

「パイバル」とはパイロットバルーンの略で、上空の風の流れを調べるために使われる風船のこと。気球を飛ばす前に、カラフルなゴム風船にヘリウムを入れて飛ばし、風の流れを確認することができます。これは熱気球の現場で行われている風読み作業に倣って取り入れた、打ち上げ前準備作業だそうです。

伊藤さんは、このパイバルを担当しているため、「パイバルおじさん」という愛称で呼ばれることになりましたが、しかしまだ28歳と若いため、「おじさん」と呼ばれることは誠に遺憾であるとのこと(笑)。

「ミスター・パイバル、と呼んでほしい」と御本人が愛称の修正を求めておりますので、伊藤さんにお会いしたときは、是非「ミスター・パイバル」と呼んで頂ければと思います。

 

気球に乗ったときの感想は?

ガス気球に乗って30メートル上空まで飛んだ経験を持つ伊藤さん。その時の実験では、気球が紐につながった状態だったとのことですが、乗ったときの感覚を尋ねてみると「ハンモックに揺られている感覚に近い」ということでした。

スーッと上空に上がっては、つながった紐で戻され、またゆっくり上がり…、という状況だったそうです。

実は伊藤さん、気球に乗ったのはその時が初めての体験でした。高いところにあまり興味が無いというお話しでしたが、その時は「もっと上がってほしい」という気持ちだったようです。

「ハンモックに揺られた感覚」で上昇して地上を見下ろす…きっと気持ちの良い体験なのでしょうね!

 

安全運行には「風を読むこと」「冗長性」

気球の実験に取り組んでいる伊藤さんは、安全に運行するためには、風を読むことが非常に大切であると語ります。

また気球をさらに使いやすく、壊れにくく、また壊れてもこれがあるから大丈夫といえる「安全策の冗長性」が何より重要だということです。

岩谷社長も安全性については気を遣っていると常々お話されているので、何重もの安全性を考慮しての開発・実験が行われていることが伝わってきました。

 

伊藤さんは前職で大企業に勤めていたわけですが、その時の環境に比べると岩谷技研はたいへんスピード感があって驚いたといいます。

そんな目まぐるしく状況が変化する中で様々な開発・実験を行い続けている伊藤さんの目は、とても前向きで輝いており、苦労の中に確かなやり甲斐と楽しさを見出しているように感じました。

20代〜30代のエンジニアが中心となり宇宙旅行の実現に向け、設計・開発・製造を行う岩谷技研ですが、定年後も夢を追いかけたいと入社したシニアスタッフも活躍しています!

 

他ではやっていないことをやっているのが魅力

エンジニアとして札幌でお勤めされていた会社を定年退職され、2023年2月に岩谷技研に入社された鈴木義生さん。昨年の夏頃にたまたま観ていたテレビで岩谷技研の様子が放送されていて「札幌にこんなおもしいことをやっている会社があるんだ」と感心しました。

定年し、さてこれからどうしようかという時に岩谷技研のことを思い出し、HPを見てみるとパートの募集をしていたので、自分にも何かサポートできることがあるかもしれないと、思い切ってメールを送ってみたのだそうです。

「モノづくりが好きなので」とニッコリ微笑む鈴木さん。ご家族も「好きなことならいいんじゃない」と再就職への背中を押してくれました。

実際に働くようになって、岩谷技研の印象はいかがですか?と聞くと「まだわからないことだらけですが・・・」と遠慮がちに「工場のみなさんは親切で、スピード感を持ってやっている」のを感じると話してくれました。ご自身は、毎日新しいことを勉強しているようだと言います。

今までに世の中にあるものではなくゼロから、”他でやっていないことをやっている”ことが面白く、驚きと新鮮さの毎日を楽しんでいるとのことですが、同時に未知の世界に戸惑いを感じることもあるのだそう。

 

地上とは違う高度25kmの世界

鈴木さんは前職では、調理器具、給湯器、温水暖房器具などを開発してきました。

岩谷技研で開発している気球や宇宙遊覧用キャビンは、人間にとって宇宙とほぼ同じ環境になる高度25~30kmの成層圏を耐えるものです。高度25kmになるとほぼ真空状態で、気温も氷点下80度となります。大気の圧力の大きさを表す「hPa(ヘクトパスカル)」という単位も聞きなれないものでした。地上の環境と大きく違うマイナス80度の状況で使用できるものはつくったことがないと言います。ふつう人間は成層圏には行かないので、地上での開発でマイナス80度を想定してなくても当然ですよねと笑いました。

2人乗りキャビン「T-10 Earther」ではキャビン内の気圧変化は旅客機よりも小さく、高度の変化による温度変化もほとんどないと聞いていて、今まで当たり前のように「安心・安全」と感じていたのは、実は岩谷技研の技術力あってこそなのだと、ハッとしました。

 

モノづくりにおいて大切なことは?

最後に、鈴木さんの今までの経験からモノづくりにおいて重要なことってなんでしょうか?と質問させていただくと、「品質が安定したモノづくりです」と教えてくれました。

まず、開発者がつくる基本の設計があって、工場の人が組み立てるのが一般的な製造工程ですが、そもそも構造的に組み立てにくいと出来上がりの製品にばらつきが出てくるのだそうです。構想段階から、設計者と工場の人が一緒に話せる場があり、設計の意図を工場の人がわかってくれると品質管理の精度が上がるのだと聞いて、「札幌R&Dセンター」が「江別気球工場」と統合し、開発部門と気球製造部門がひとつの場所に合体したことは、ますます素晴らしいモノづくりの環境が整ったということなんだと納得しました。

江別研究所に勤務する、研究開発部電子課の柳田拓郎さんにお話を伺いました。柳田さんは北海道函館市出身で、岩谷技研に入社する前は横浜・大阪でソフトウェア開発のお仕事をされていました。

インタビューを行った2023年3月時点で入社2ヶ月目、初任給が振り込まれた直後というお話でしたよ。
「最初のお給料はどうされますか?」の問いに、「転職で引っ越し代などいろいろと費用がかさんだので貯金します」と堅実なお答えをいただきました。柳田さんのちょっとした言葉の使い方と見た目から、堅実で誠実そうな人柄がうかがえます。

 

岩谷技研入社のキッカケは高専時代の先輩

岩谷技研に入社されたキッカケについてお伺いしてみると、電子課研究員の橋本航平さんから声をかけてもらったことが発端だったそうです。なんと橋本さんは、函館・高専の先輩!そして橋本さんと柳田さんは前職で同じ会社に勤務していたとのことでした。
(※橋本さんについては「電子課研究員 橋本航平さんインタビュー」をご参照ください。)

そんな仲の良いお二人は、会社が変わっても情報交換をしていたそうで、ある時に橋本さんから「宇宙系の仕事に興味があったらこっちに来ないか?」と誘われます。橋本さんから岩谷技研の話を聞いてみたところ、自分でも力になれそうだと思ったこと、もともと宇宙に関する企業に憧れがあったこともあり、転職を決めたとのことでした。

面倒見がよくて優しい橋本さんがいる職場ということもあって、柳田さんも安心して入社できたことでしょう。素敵な友情ですね。

ちなみに柳田さんと橋本さんは高専時代、軽音楽部サークルの仲間だったそうで、柳田さんはドラムを叩き、橋本さんがベースを弾いていたということです。我々インタビュアーはその話を聞いた瞬間、「あれ?橋本さんにインタビューした時はそんな話は出てこなかったぞ?」となりましたので、いつかその点も踏まえて橋本さんにまたお話しを聞かなければと思うのでした。

 

行きはよいよい帰りは怖い!?

気球の実験にも帯同している柳田さん、いちばん大変なことは何ですか?という問いに、「現地に行っての実験でとにかく大変なのは、帰りです」と迷いなく返答されました。

え、帰り? それはどういうことですか?

「実験を行う時は夜中1時とかに現地集合となったりするんです。で、実験が昼過ぎに終わって、そのまま江別研究所に直帰しなければならないんですね。睡眠不足の中、交代交代で車を運転して帰ってくるのが、とにかく大変で…。」としみじみ語る柳田さん。

たしかに真夜中から実験の準備をして、昼過ぎまで実験を行い、さらに遠路はるばる帰ってくるのはかなり大変そうです。

ただ、「気球を飛ばしている時は感動して、その瞬間はとても良い経験だと感じます!」と目を輝かせる柳田さん。

「でも」と柳田さんはまた少しうつむいて、「帰りの車…そこだけはたいへんですね…。」と深い実感を伴ったお答えが返ってくるのでした。

 

宇宙への興味はキャンプがキッカケ

もともと宇宙に関心があったという柳田さん、いつどんなキッカケがあったのですか?とお尋ねしてみました。

「きっかけは学生(高専)の頃のキャンプでした。夜に星を見上げて感動して、その時に宇宙に興味が湧いたんです。」それまであらたまって星を見上げることが無かったこともあり、その時見た満天の星空が心に刻まれたということでした。

学生の時に見て感動した星空、いつか柳田さんがキャビンに乗って地球とともに宇宙を見上げた時、どんな感想を聞かせてくれるのか興味がわきますね。

 

やりがいに満ちた岩谷技研での仕事

江別研究所での勤務は柳田さんにとってたいへんやり甲斐のあるものとなっているようです。

「以前、ソフトウェア専門でやっていた時は、できたものが最終的にどんな形で使われているのか知ることができなかったんです。今はやったことが何につながっているのか、フィードバックも得やすい環境なので、たいへんやり甲斐を感じています。」

そしてさらに、「江別研究所のメイトさんも活気があっていい雰囲気。こういった環境では事故も起きにくいと感じました。社内の風通しも良いですし、フィードバックもしやすいです。」と柳田さんは付け加えます。

岩谷技研で働く皆さんの活発なコミュニケーションが、仕事のやりやすさに繋がり、またやり甲斐にも繋がっているのだなということがよく分かりました!

2022年1月から岩谷技研でアルバイトを始めたという北澤元気さん。現在は大学院修士の2年生に進級し、学生アルバイトの中でも先輩の立場になり、自分の気持ちにも江別気球工場にも変化があったと話をしてくれました。

 

学生アルバイトはどんな仕事をするの?

昨年、江別気球工場で初めて会った時には、午後3時以降のメイトさんたちがほとんど帰ってしまった広くガラーンとした工場で一人黙々と作業をしていた北澤さん。飯塚工場長から「彼は北大野球部(準公式)に所属するスポーツマンで、さらにピアノも得意。文武両道なの」と紹介してもらったことをよく覚えています。

岩谷技研では、所属している変形制御学の研究室の先輩がたくさん働いているので、 研究開発の現場を見てみたいと、このアルバイトを始めました。研究室では「構造の最適化を研究しています」と教えてくれ「例えば 、縦糸と横糸で織られた布を引っ張った時の歪みやすさについてとかなんですけど」と分かりやすく説明してくれました。その学びは岩谷技研で大活躍中の3Dプリンターを使用する時に役立ちそうですよね。

学生アルバイトさんの主な仕事は、メイトさんと一緒に溶着作業をするほかにも、作業がスムーズになるように道具の調整や改良など。3Dプリンターではさまざまなパーツも作成します。

 

江別気球工場の雰囲気が変わりました

「プロトタイプは開発部の研究者さんがまず作ってくれることが多く、それを土台にして考えたり、工夫したり、試してみたりを繰り返します」その一連の流れを学生アルバイトのみんなで試行錯誤でやっていくことをおもしろく感じていたそうですが、以前は「仕様書には数字だけとか、情報が少なかった」ので、やってはみたもののうまくいかないこともあったのだそう。

江別気球工場で開発部のみなさんと一緒に働けるようになってから、このパーツを何に使うのか? この設計の意味はどういうことなのか? そうした疑問も直接聞くことができ「実際のイメージがわかり、つくりやすくなりました」と、気球工場と旧・R&Dセンターが同じ場所に統合されたことをとても良いと感じている様子。

「以前は、メイトさんが帰ると人も少なくて寂しい雰囲気もあったけど、今は開発部のみなさんがバリバリ働いているので夕方もにぎやかです」と話し相手が多くなったことも喜んでいます。

「みんなでどうしたらいいかを話し合って、何度も作り、良い結果が出た時には本当に嬉しい」と、ちょうど一年位前にはそんなふうに言っていた北澤さん。アルバイトを始めてからの経験値も増えて、これからますます楽しくなりそうですねと言うと、北澤さんの表情が変わりました。

 

進行中のプロジェクトリーダーに「責任感を持ってやっていきたい」

「今までは先輩の下について教えてもらって仕事をしていましたが、教えてくれていた先輩がみんな卒業してしまったので」と、それまでニコニコと楽しそうに話してくれていましたが、急に真剣です。気楽な後輩の立場から、今度は自分が先輩の立場になったことを自覚し、しっかりしなくちゃと責任感を感じているのだそう。

北澤さんは、使用済みの気球を利用して工場内にディスプレイとして展示するプロジェクトのリーダーとして取り組んでいます。メディアの取材が入ることも増えてきたため、気球を身近に感じてもらいたいと岩谷技研は考えているのだそうです。

竣工披露式に参加させてもらった時、一人乗り用のキャビンと気球が工場内に展示されていましたが、初めて見る透き通った気球の美しさに感動したことを思い出し、それはとっても素敵ですね!いつ出来ますか?その時には取材に来ます!!と、我々の方がまた張り切ってしまい、北澤さんにさらにプレッシャーをかけてしまいました。

「がんばります!」と答えてくれた北澤さんに対して、子どもの成長を感じて感動する母のような気持ちにもなり、嬉しく頼もしく感じたインタビューでした。

江別気球工場が開設して1年が経ちました。当時4ヶ月だった息子さんを保育所に預け、初めての子育てと新しい仕事にチャレンジの1年だったという横岡さんのお話を聞きました。

 

江別気球工場での変化

縫い物や手作業をすることが好きという横岡さん、「未経験者応募OK」「工場内でプラスチック気球のバルーン部分の製作をお願いします。特殊な機械でプラスチックフィルムを溶着する作業です。作業は4~5名程度のチームで行います」という募集要項を読んで、私にもできるかも?と思って岩谷技研に応募したとのこと。

一緒に働くメイトさんは先輩ママたちが多いので、子育ての話も聞いてもらえアドバイスをいただいたり、働き出したことによって、みなさんに出会えたことが子育てにおいても心強く感じられたのだそうです。

横岡さんは、江別気球工場が軌道に乗るまでの間、工場内の様々な業務を担っていた総務部・小川順子さんが札幌本社に戻るのをきっかけに、工場長から相談されて業務を引き継ぐことになり、「現在は、シフト作成や勤怠管理、備品などの発注や物品管理などが主な仕事内容です」と話してくれました。仕事内容が変わることへ少し戸惑いもあったようですが、「小川さんの代わりにやってみます」と答え、新しい仕事を覚えていきました。

横岡さんの仕事内容が変わっただけでなく、この一年の間に江別気球工場には大きな変化がありました。

 

札幌R&Dセンターが江別にやって来た

江別気球工場のメイトさん達にとって、昨年の夏頃は「時々、札幌R&Dセンターから開発の方が来て、技術的なことを教えてくれるんですよ」と言いながらも、R&Dがどんな場所で、どんな方たちが働き、どんな仕事や開発がされているのかも全くわからない、来てくれた方のお名前も把握できていない・・・という状況でしたが、2022年11月「札幌R&Dセンター」が「江別気球工場」に移転、「江別研究所」になりました。

開発部門と気球制作の場所が一緒になり「R&Dの皆さんが身近になったことは、とても良いこと」だと感じているのだそうです。

今までメイトさんだけで作業していた時は情報量が少なく、例えば作業指示が急遽変更になった場合も、開発部門ではどういうことがしたくて変えたのか?の理由を直接聞くことができませんでした。理由がわかれば、製作側からも「こうした方が、より効率が良く時短で作れる」などの提案ができ、お互いへの理解が深まります。

最初の頃の溶着の仕方だけわかっていた状態から、知識が増え技術も上達し、より「自分たちも開発に関わっている」といった気持ちを感じるようになりました。

 

実験も宇宙も身近に感じられる

溶着作業は重要なことなので最初から注意深く慎重に行なってきましたが、誰が気球に乗っているのかがわからなかった時よりも、知っている人が有人飛行実験を行なっているのだと思うと、さらに安全や成功への意識が高まったようです。

岩谷技研で仕事を始める前の横岡さんは、宇宙にはさほど興味があったわけではなく、宇宙旅行を目指す気球を製作するなんて、とても夢のある仕事だと思ったそうです。実際に働いてみると、気球宇宙遊覧はふんわりとした「夢」ではなく「技術」で実現できる、岩谷技研で働くみんなの力なのだと感じます。宇宙への興味もどんどん湧いてくるようになりました。

横岡さんは気球製作をする「メイト」から、工場内の管理の仕事が主となった「キャスト」という役割に立場が変わりましたが、今でも溶着作業を行う時があります。いつもはできないからこそ「久しぶりに一緒に作業をすると、みなさんの経験値がどんどん上がっているのがわかって、すごいんですよ」と教えてくれました。

一年前はほとんどのメイトさんが「初めてのことばかり、わからないことばかりですけど楽しいです」と話してくれていたのに、もうここにいるみなさんは気球作りのプロ集団なのだと感服しました。