速報:高度2万m超の達成 ——国内最高高度に達した飛行試験を振り返る——

2024年7月17日(水)― この日、高度2万m(20km)を超える飛行試験を行い、国内での気球有人フライトとして最も高い高度20,816mに到達しました。
プレスリリース(2024年7月18日)

今回のJOURNALは、この飛行試験の現場に立ち会った広報担当者の目線から、現場の様子をお届けします。


今回の飛行試験は、今年度の開始をめざす商業運航「宇宙遊覧フライト℠」に向けた各種検証を目的に、6月中旬から実施が計画されていました。しかしながら、今年の6月からの天候は、例年にないほど気球飛行の上で条件が悪い日が重なり、何度も飛行試験の延期を余儀なくされました。

7月17日は、およそ1か月ぶりに気球の飛行に適した天候となり、待ちに待った飛行試験を実施することとなりました。

前日の7月16日の午後。地上スタッフを担う社員が次々と離陸地点の現場に向かって出発しました。岩谷技研の気球は、空気より軽いヘリウムガスの浮力によって成層圏へと上昇するガス気球です。現場では、このヘリウムガスの封入をはじめ、翌日未明の離陸に向けた様々な準備が地上スタッフによって黙々と進められました。地上スタッフは今回から新調された夏用作業服に身をまとい、夜を徹して作業をおこないました。

気球へのヘリウムガスの封入は、日付が変わった頃に無事に終了しました。気球には大量のガスが封入され、地面に対して立ち上がった状態となりました。ただ、見た目は、空気をいれて大きく膨らませた風船のようなものではありません。気圧の低い上空に上がるにつれて気球内のガスが膨張するので、気球は徐々に膨らみます。ちょうど飛行機に乗ったとき、または山に登って山頂に行ったときに、お菓子の袋やペットボトルが膨らむのと同じ原理です。ガスは、気球が目標の高度帯で最適な大きさになるよう計算して充填されます。

ここから人を乗せるキャビンに搭載する様々な機材の最終確認作業が進められました。このJOURNALに使われている写真を撮影した機材も、その一つです。

午前1時30分。離陸までおよそ1時間となったタイミングで、パイロットと地上スタッフが全員集合して最終ブリーフィングが行われました。離陸に向けての準備が順調に進んでいること、そして最新の気象状況、航路予測などが共有されました。

このブリーフィングが終了すると、ついにパイロットがキャビンへ搭乗し、ハッチが閉じられます。ここからキャビンは気密状態となり、いよいよ成層圏に飛び立つ準備が完了です

午前2時40分。地上スタッフ全員でカウントダウンを行ないテイクオフ。辺り一面がまだ暗い中、ライトアップされた気球は浮力を使って、上空へと飛び立っていきました。静寂の中、あっという間に視界から遠ざかり、暗闇の中への消えていく光景は、とてもスマートで、鮮やかな離陸でした。これまでにない大型の気球の離陸に私も静かな興奮を覚えました。

気球は順調に上昇し、午前4時15分~5時15分にかけてのおよそ1時間、商業運航での飛行を予定しているサービス高度帯(18-25km)で青い地球を眼下に眺める「宇宙遊覧フライト℠」を実施しました。
後日のJOURNALでは、実際に搭乗したパイロットの声もお届けしたいと思います。

気球は、最高到達高度20,816mに到達したのち、徐々にガスを放出しながら降下し、午前07時36分、およそ41km離れた北海道帯広市に着陸。 今回の飛行試験では、本番の商業運航に向けた様々な上空での検証ができ、さらに有人気球としては国内で過去最高の高度への到達を記録することができました。

さて、飛行試験を終えた翌日、江別に帰ってきた社員は、早速、商業運航への最終準備に取り掛かっていました。私は、今回の飛行試験は大きな通過点の1つになったと感じています。これまでと同様に、この飛行試験で得られたことをしっかりと分析し、商業運航に向けて万全の準備を進めていきます。

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