研究開発部 実験課 気球パイロット 宮嶋香和さんインタビュー
研究開発部の宮嶋香和さんは気球のパイロット第1号に選出された方です。どのような経緯でパイロットに応募したのか、宮嶋さんとはどんな方なのか、じっくりお話をさせて頂きました。
飛行機操縦士、気球パイロットになるため宮崎から北海道へ
宮嶋香和さんは千葉県柏市出身の41歳。大学を出て最初に就職した医療機器メーカーで山口県に7年ほど勤務し、ドバイ駐在なども経験。その後フリーランスとなり結婚。九州内を3回ほど移り住み、直前まで宮崎県で働いていたとのことです。
そして岩谷技研でパイロットになるため、宮崎県から北海道に家族で移住してきました。
これまでの職歴をお聞きしてパイロットと結びつかないのですが?とお尋ねすると、
「実は、もともと飛行機のパイロット志望だったんです。僕が大学を出た当時は裸眼視力の検査があって、パイロットになれなかったんです。今はもうその条件は撤廃されてるんですけど。当時は諦めて普通の仕事をしてきた、という感じです。」
パイロットに対する強い思いを抱いていた宮嶋さんですが、その情熱は歳と共に衰えるどころか益々強くなり、なんと36歳の時にアメリカまで行って念願の自家用飛行機のパイロット免許を取得したのだとか。
夢を追い続け、達成する宮嶋さんのバイタリティが伝わってきます!
免許を取りに行く決心をした理由は婚約がきっかけだったようで、「結婚前にやりたいことをやっておこう!と思って。」と当時を振り返ってくれました。
「とにかく空が好きだったんです。海外であれば、まだ可能性があると思って。ずっと昔からパイロットになりたい!というのが夢でしたからね…」
岩谷技研との運命的な出会い
つい最近まで岩谷技研のことを知らなかったという宮嶋さん、初めてその存在を知ったときの衝撃は相当なものだったと語ります。
「今年の3月に出張で東京に行って、羽田空港で帰りの便を待っていたんです。その時たまたまLINEニュースを見たんですよ。普段まったく見ないんですけどね。そしたら岩谷技研のニュースが目に飛び込んできて、ビックリしたんです。」
普段見ないニュースで偶然、岩谷技研の存在を知り、気球のプロジェクトを知ることになります。
そして気球パイロットの募集が行われていることが分かると、「これは受けないと一生後悔するぞ!」と思い、なにも考えず勢いで応募したということでした。
パイロット繋がりのエピソードということで、ここまで自然な流れとして違和感なくお話を聞いていたのですが、話はそう単純ではありませんでした。というのも「以前は宇宙から見た地球になど、興味はなかったんです」と言うのです。
宮嶋さんは、空をかける飛行機には並々ならぬ思いがあるのですが、ほんの数年前まで宇宙には全く興味がなかった!というのですから驚きです。しかも「宇宙から地球を見ることの何がいいんだろう?」という気持ちだったそうです。
「これはちょっと不思議なことなんですが…」そう前置きをして宮嶋さんは話し始めました。
「昔は宇宙から見る地球なんてぜんぜん興味がなくて。でも3、4年前のある時期、なぜか?突然、“宇宙” に引っかかりを感じたんです。なんだろう? それを何日も考えていたら、ある日、まさに宇宙から地球を眺める夢を見たんです。それまでは『はいはい、地球って青いんでしょ』くらいに考えていたんですが、ただ青いんじゃなくて、“地球が青く発光している”。それがものすごく感動的な景色で…。目が覚めてからしばらく、ボーッとその感動に浸りながら『いつか生きてる内に見れたらいいな』って、その日から思い始めたんですよ。」
そんな体験をしていたため、LINEニュースで岩谷技研の話題を見た時には、「これだ!」と反射的に思ったそうです。
「あの夢を見たときから『青く光る地球を見てみたい!』と思っていて、でも実際に見ることはないんだろうなぁとも思っていたんです。そしたら、気球に乗って見られる!って…。こんな凄いことってないですよね」と、ワクワクした表情で語る宮嶋さん。
そんな運命的な出会いから実際にパイロットに選出された時は、人生で一番とも思える大きな喜びを感じました。
最終面接の際に岩谷社長にお会いした時は、ずっと鳥肌が立ちながら会話をしていたと言います。
「岩谷社長の言葉には、なにか響くものがあるんです。言葉自体なのか、聞こえ方なのか。不思議な感覚でした。」
宮嶋さんは岩谷技研に対して「ここしかない!」という感覚だったようですが、岩谷社長もきっと「この人だ!」と思っていたのでしょうね。
飛行機の操縦と気球は全然違う世界
宮嶋さんは現在、及川隊長のもとで気球の実験業務に携わっており、気球をロープに繋いで30メートル上空を飛ぶ係留試験を体験しています。
気球に乗ったときの印象を聞いてみると、同じ空でもやはり飛行機と気球は全然違うものだということでした。
「飛行機というのは割と自然と対峙していくというか、風と戦うじゃないですけど、そういう要素が強くあります。対して気球は、大気と一緒に動くから、揺れないんですよね。岩谷社長が仰ってましたけど、『自然と調和する乗り物』なんだなという感覚です。」
飛行機の操縦士だからこそ分かる感覚の違いですね。
「気球に乗るのは圧倒的に楽しいです。逆に気をつけなくてはいけないのは、「楽しい」だけではいけないということ。パイロットは1人でなくお客様と一緒に空を飛ぶことになるので、その気持ちは強く持っておこうと思っています。安全第一ですね。」
趣味・休日の楽しみは?
頻繁な飛行実験など大変な毎日を過ごされている宮嶋さんですが、休日の過ごし方も聞いてみました。
「子どもは男の子が二人で、4歳と8歳なんですが、ひたすら彼らと遊んでいますね。今日はどこに連れて行こうかって、いつも楽しみです。」
「この間は大雪山連峰の主峰「旭岳」に行きました。旭岳にはたまたま今年1月に旅行に行ったんですよ。こちらに移住してくる予定は、まだ全くない時です。子どもたちに旭岳の雪山を見せてやろうと思って、ロープウェイに乗って。凄まじい世界ですよね。吹雪とか氷点下十何度とか、それをみんなで体感するっていう。そういう経験をいっぱいさせたいなと思っています。」
冬の旭岳に行くという、道民でもなかなしない体験をされたようですが、北海道に移住してからつい最近また旭岳に行き、雪のない壮大な景色の散策コースを回り、家族で大満足したそうです。
「今度は釣りに行こうか?とか、子どもとどう遊ぶか考えるのが楽しい。北海道のいろいろな場所に行ってみたいですね。」
「宇宙の民主化」誰もが宇宙を見ることができる世界へ
みなさんが一所懸命に “気球による宇宙遊覧” の実現に向けて動いている岩谷技研で、宮嶋さんは「この場にいられることは本当にありがたい。貴重なチャンスを頂いたという気持ち。」と、感謝の毎日で過ごされているとのこと。
「今まで見ることができなかった『宇宙の景色』を見ることができるようになる。そんな素晴らしいプロジェクトに加われたっていうことがやっぱり嬉しいですし、実現できるように気合を入れてやっていきたい。やっぱり自分の家族にも見せたいですしね。」
岩谷技研では宇宙をすべての人に開かれたものにしていくという「宇宙の民主化」を掲げています。宮嶋さんもその思いにたいへん共感を抱いているようで、「その意味で、一人でも多くの人に『宇宙の景色』を見てほしいって思います。」と熱い想いを語ってくれました。
岩谷社長がインタビューで「地球を見ると人生観や意識が変わるそうですよ?」と仰っていたことがありましたが、宮嶋さんが夢の中で見たという「青く輝く地球」を、自らがパイロットとして搭乗した気密キャビンから見た時、どんな意識の変化が訪れるのでしょう? その未来は、もう間もなくです。