実験責任者 及川明人さんインタビュー

R&Dセンターの機能が江別気球工場に移され、工場内の一角に開発部門のメンバーのデスクが並べられています。どんな方がどのようなお仕事をされているのか?
まずは、実験責任者である及川明人さんにお話を聞きました。

隊長と呼ばせてください!

取締役の仲さんから「実験隊長です」と紹介され、役職に隊長という肩書きがあるとは、さすが先進的な岩谷技研と感心し、「隊長!よろしくお願いします」と挨拶すると「隊長ですか?」と若干困惑気味な及川さん。どうやら、隊長と呼んでいるのは仲さんだけで、正式には「実験の責任者です」と自己紹介していただきました。

それでも、「責任者」という肩書きよりも「隊長」という呼び名がカッコいいと思うので、隊長とお呼びしたいと言うと、多少苦笑いのような表情を浮かべながらもOKしてくださいました。

それでは隊長!さっそくですが実験について教えてください!!

実験で一番大切なことは、それは…

岩谷社長や仲さんの講演会で「気球で宇宙旅行を実現します」と言葉で説明しても会場のみなさんは半信半疑な様子で聞いているのですが、「できますよ、ということを見せるのが一番いい」と岩谷社長が言うように、実験の様子のVTRを観ていただくと、百聞は一見にしかず!気球で本当に宇宙に行けるんだ!と、皆さんの表情がみるみる変わっていきます。

実験は、開発した装置が正しく作動するかどうか、理論や仮説が正しいかどうかを確かめるだけに留まらず、岩谷技研の行っていることを、多くの人にわかりやすく伝えることもできる重要なものなんですね。

さて、そんな実験のVTRを観ていると大勢のスタッフが関わり、作業をしている様子が映し出されていますが、実験を行う上で、大切なことというのはやはり「チームワーク」なのでしょうか?

「チームワークも大切ではあるのですが、一番大事なのは事前準備なんですよね」と及川隊長。事前準備がしっかり行われたかどうかが実験を成功に導く鍵だということです。さらに、その事前準備を今までの実験では、及川隊長がほぼ一人で行っていたというので驚きです。

回を重ねるごとに実験の規模が大きくなってきているので、経験や技術を他のメンバーに伝えていく必要を感じていて、それが今後の課題であると考えているのだそうです。

実験、実験…、ストレス解消は子供と遊ぶこと

2022年は、無人の気球を高度30キロまで飛ばし地上との無線通信を検証する実験、高度100メートルの有人飛行など、重要な実験がたくさんありました。

実験の準備をし、実験して、実験後の後処理をし、さらに報告書を作成する。実験後はできるだけすぐに報告書を上げたい、一ヶ月も二ヶ月も経ってしまっては、実験の鮮度が落ちてしまいます。

なので、忙しくてゆっくり休む暇がないのが辛いところだそうですが、休みの日は、7歳と5歳のお子さんと遊ぶのが楽しくストレス解消になるのだそうです。

岩谷技研で働く前は、静岡で会社勤めをされていましたが、元々は北海道石狩市の出身で、子育てのために北海道に戻ってきたかったという優しいパパさんの笑顔を見せながら、お話ししてくれました。

成層圏への有人飛行の実験

ところで、冬の間は実験の回数が減るのでは?確か、気球を海に着水させるのに適した季節は5〜6月、9〜10月だと聞いたことがあります。

「気球を飛ばすには、天気や風待ちなど、自然環境に大きく左右されますが、冬だと北海道の場合は畑が雪に覆われ、気球を雪の上に降ろしてOKとなるので道内で実験ができるんですよ、冬はとにかく寒いですけどね」と教えてくれました。

2023年は、高度25キロへの気球の有人飛行の実験を行います。25キロ辺りになると真空状態の氷点下80度となり、地上との温度差は約100度となる過酷な環境になります。

岩谷技研では、大きな圧力がかかっても耐えられる繊維強化プラスチック製気密キャビンを開発しましたが、これからさらに有人飛行実験を100回は行う予定で、安全性の精度を99%以上まで高められたことを確認するのだそうです。

隊長、今年も忙しくなりそうですね・・・

「大変ですよ〜」と言いながらも、実験を重ねる度に宇宙旅行の実現へと近づいていっている、そんな確信とやりがいを及川隊長の表情から感じ取ることができました。