Archive for 2月, 2023

札幌市北区にある岩谷技研の本社を訪ね、岩谷社長にお会いしてきました。お話は、2023年の岩谷技研の事業についてから始まり、メイトさんや社員の皆さんからの「岩谷社長への素朴な質問」への回答。さらにそこから話題は、生物の進化や恐竜時代、人類の歴史、星の寿命の話・・・と宇宙規模に広がっていきました。

岩谷社長の言葉の一つひとつが興味深く、面白く、知識と新しい視点が増えるような内容で、視野が拡がったと感じたこの感覚。「地球を外から眺める体験をした宇宙飛行士達が、帰還後に大きく価値観を変え、生き方を激変させた」というのと同じ体験だなと思ったほどです。

約2時間ほどのインタビューは、岩谷社長と共に宇宙空間を旅していたような、楽しい素晴らしい時間でした。

今回はその中から、「2023年の取り組みと目指すもの」について語って頂いた内容をご紹介します。

 

宇宙の入り口に新しいフロンティアを拓く

2022年は、2月の岩谷技研初の有人飛翔試験の成功を皮切りに、5月には無人の気球に無線機を積んで高度30キロまで飛ばし地上との通信を検証する実験にも成功。6、7、8月と係留ロープ付きでの有人飛行実験を繰り返し、9月にはついに係留ロープなしでの自由飛行試験に成功。十分な安全が担保されたことを確認し、11月には目標高度100mを超える102.3mまでの有人飛行に成功しました。まさに技術の開発と進歩が目覚ましい躍動の1年!となりました。

「今年はさらに実証実験をどんどん進めていきます。重要な年になるでしょう」と岩谷社長。

2023年は、社員を含め実験志願者の方に協力してもらい、有人飛行を可能な限り何度でも行い、4km、10kmと高度を引き上げ、秋までには最終目標高度である25kmに挑戦する予定です。

「はい!私が志願者です」と言わんばかりに、横でずっと手を挙げている取締役の仲さん。昨年、江別市で開催された大麻地区自治会長役員研修会での講演会では「体重オーバーでまだ乗れていない」とおっしゃっていましたが、キャビンに乗り込むのに体重制限があるのでしょうか?

岩谷社長:「体重制限があるわけではないですが、エレベーターの重量制限のようなものだと考えてください。2人用のキャビンなので、例えばお相撲さんのような体格の人が2人乗ると、やはり窮屈になってしまいます。仲さんは相撲取りのように重たいわけではありませんが、できれば、20%〜30%くらい減量をしてもらいたいです」

仲さん:「自分が軽いからって!!・・・20%も減らすのはムリ!」

岩谷社長:「ではせめて、10%お願いします」

実験隊長の及川さんが「1kgのものを浮かせるためのヘリウムガスが約5,000円」と言っていました。体重が約60kgとするとヘリウムガス代は30万円の計算になります。1キロでも2キロでも軽い方が経費削減できますよね。

本当に気心知れた間柄というような岩谷社長と仲さんのやりとりを聞きながら、私もいつか気球に乗る日のためにダイエットをしておこうと密かに決心しました。

 

それはさておき、最終目標高度への有人飛行実験が成功すれば、いよいよ宇宙への旅が開始されるんですね!

「実験に成功しても試験的に作ったプロトタイプから、安全で快適で誰でも利用できるようにするために、これからまだやることがあるので、実用化には時間がかかります。ライト兄弟が有人動力飛行に成功したからといって、旅客機が一般的に広く使われるようになるには年月が必要でしたよね」と、お相撲さんやライト兄弟とわかりやすい例を出し、イメージしやすいように話をしてくれるところに、岩谷社長の優しさとユーモアを感じます。

 

宇宙旅行だけではない気球の可能性

「気球は宇宙旅行だけではなく、いろいろな活用ができます。有人に限らず、無人で宇宙へものを運ぶこともできますし、わざと低い高度を飛ばして作物の生育状況を確認するなど農業に活用することも考えられます」

実際に気球は民間企業や大学で宇宙物理学、天文学、気象学など様々な分野での科学観測や、工学実験にも利用されています。

現在、岩谷技研の気球は、最大300キロの重量物を高度30キロ程度の成層圏まで運ぶことが可能です。唯一無二の開発製造技術で要求に見合った気球の設計を行い、それを自社の気球工場で製造し、打ち上げの運用・回収までをフルサポートする「ワンストップサービス」の提供も始めました。

ふうせん宇宙撮影から開発を進めて、気球で宇宙遊覧フライトができるようになるだけでも凄いことなのに、気球がそんなに利用範囲の広いものだったとは!

 

宇宙よりも深海のほうが簡単

そういえば以前、空の技術は深海にも活かすことができると言っていましたが、岩谷技研は空だけでなく海でもできることがありそうですよね?

「宇宙に比べれば、深海は簡単です。水の中は飛行機が飛んでるわけではないし、深海には航空法のような法律はありませんからね」と、すぐにでも何かできそうな勢い。

「深海は沈めればいいので頑丈で重いものを作ればいい。ひもを付けておけば回収も簡単です。空は頑丈だけれども、浮かせるために軽いものを作らなくてはいけないので難しいのです」

現実的には、今の段階では気球の宇宙遊覧の実現が優先ですから、深海のことは考える時間がない状況ですが、「宇宙旅行の実現で終わりではなく、もっと世の中や社会の役に立ちたい」ということを繰り返し何度もおっしゃっていました。

 

アイデアや可能性、できることはたくさんあるけれども、岩谷社長は今一番やるべきことにエネルギーを結集し、着実に歩みを進める2023年にすることを見据えているようです。

さらに岩谷社長の心の中には、まだ我々には明かされていない「夢の果て」があるように感じました。

話はまだまだ続きます「岩谷社長への素朴な質問」の回答は、また次の記事で!

気球による宇宙遊覧旅行を目指す株式会社岩谷技研・岩谷圭介社長インタビューついに開始!

天才・岩谷社長は普段どのようなことを考えているのか?どんな人柄なのか?岩谷社長の頭の中を覗くべく、「岩谷社長総力特集」として今後複数の記事に渡って、社長へのインタビューをご紹介していきたいと思います!

 

謎に満ちた岩谷社長・社長室を訪問

我々インタビュアーは満を持して岩谷社長のインタビューを行うべく、社長室へお邪魔させて頂きました。

もちろん目的はインタビューだったのですが、様々なものが置かれている広い社長室に我々は興味津々!中を案内していただけますか?とお願いしたところ、気さくな岩谷社長は快く社長室内を案内してくれました。

天才・岩谷社長の社長室にはどんなものがあるのか?ディープで宇宙的な広がりを見せる岩谷社長の世界の一端をご紹介します。

 

岩谷社長は甘いお菓子がお好き?

岩谷社長のインタビュー中に食べ物の話題になったのですが、あまりこだわりがなく何でも食べるという中で、甘いお菓子は好きというお話でした。

そこで最近の社長のお気に入りはこちらのケーキスタンド!色とりどりのお菓子が乗せられていました。

綺麗に並べるのが岩谷社長の使命だそうです(笑)ちょっと意外というかお茶目な一面が垣間見えて、思わず笑顔になりますね。

 

 

社長室に茶器セット!

社長室でまず気になったのは、ソファの横に置かれている本格的な茶器。

実は岩谷社長のご実家は茶道教室を開いていたこともあり、岩谷社長ご自身も大学時代は茶道サークルに所属。

さらに岩谷社長の奥様との出会いは大学の茶道サークルだったということで、社長にとって茶道は切っても切れない大変重要な分野の一つのようです。

 

巨大テレビ画面でミーティング

社長室に置かれている巨大なテレビ。こちらは社内ミーティングなどに使用されているとのことです。

また、東京など離れた場所との打ち合わせもこの場所で行うこともあるそう。コロナによってZoomミーティング等が一般化されて便利になったと話されていました。

 

自作のミーティングランプ

社長室の出入口に設置されているミーティングランプ、なんとこちらは岩谷社長が自作されたもの!

最初は外側だけに付けていたのですが、そうすると消し忘れることが多くなったので、内側にも付けて同期する仕組みに変えたそうです。

 

ネットで探してもこういったミーティングランプはなかなか売っていないそうです。

「無いものは自分で作ってしまえばいい」という岩谷社長のモットーがあちこちに活かされているんですね。

 

長期間飾るクリスマスツリー「あったらハッピーじゃないですか」

社長室の中に飾られているクリスマスツリー。この時は1月半ばを過ぎた時期でしたが、何故か未だに仕舞われずに置かれています。聞くところによると、毎年11月頃から飾り付けを始め、3月頃まで出しておくのだそうです!約半年間も!?

「だって、あった方がハッピーじゃないですか」

そんなことをさらっと言ってのけてしまう岩谷社長。なんとも可愛らしい一面が見えますね。

ただ一応、何故長期間飾っているかの理由もあって、もともとクリスマスは太陽のお祭りという歴史があり、冬至の時期、つまり太陽の弱い時期においてはクリスマスのお祭りをしても構わないというのが本来の考え方。そして北海道は3月頃まで雪の時期・太陽が弱い時期なので、その時期までは飾っていても良いのではないか?というのが岩谷社長の考えなのだそうです。(さらに長い宗教的な解説もありましたが割愛)

クリスマスツリーを置く理由をここまでしっかり深く考えている方はなかなかいないのではないでしょうか。

ただ、なんだかんだ言って「実はただ飾りたいだけなんです」と最後に一言付け加える岩谷社長、本当にユーモアに溢れていますね。

 

謎のワードローブの中には…

さらに社長室の奥には謎のワードローブ…。「こちらは何ですか?」と尋ねると、「見てみますか?」と岩谷社長はおもむろに袋を大きく開けて中に入っているものを見せてくれました。

 

中には大きな謎の植物が!こちらは江別工場の開所式で頂いた植物で、岩谷社長が大事に大事に育てているのだそうです。もらった時は岩谷社長が手で示されているくらいの高さで、そこから倍くらいの大きさに成長しています。

夏の期間は外に出していたのですが、冬場は寒いのでこの中に入れて育てているとのこと。太陽の代わりにLEDを照らし、寒さ対策でヒーターを設置。とっても大事にされているのが分かります。植物の育て方があまりにハイテクで、実に岩谷社長らしい育て方だなと思いました。

ちなみに植物の名前は分からないとのことでしたが、植物に詳しい方々に聞いてみたところ「ドラセナ(幸福の木)」ではないかという話でした。

 

3Dプリンターも修理してしまう岩谷社長

分解された状態の3Dプリンターが床に置かれていました。なんと岩谷社長が工場で壊れた3Dプリンターをご自身で修理しているそうです。

 

工場などで3Dプリンターが壊れたと報告を受けると、岩谷社長はそれを社長室へ持ってきてもらい、修理しているのだとか。

バック・トゥ・ザ・フューチャーのドクに憧れ育ったという岩谷社長の生粋のエンジニア魂を感じます。心なしかメカを前にしている時の岩谷社長はひときわ目がキラキラ輝いているように見えました。

 

話はまだまだ尽きないのですが、さらなる岩谷社長のディープなお話はまた次の機会にご紹介しようと思います。

R&Dのデスクを見学させてもらった時に、不思議な植物を机の上に置いていたのが、橋本航平さんでした。「苔テラリウムの元気がないので、光を当てているんです」と教えてくれ、とても心の優しい方なのだろうなと思いました。

ものづくりの根幹に関わることができる喜び

2022年5月に岩谷技研へ入社したという橋本航平さん。函館高専の機械工学科出身です。岩谷技研は3社目となり、最初はテレビの設計などのものづくりの仕事をしていましたが、次の会社では、パソコンに向かってシミュレーションをし、業務効率化のための解析関係の仕事をしていました。

やっぱり自分は、手を動かして作るのが好きだと思い「また作る仕事がしたい」という気持ちになっていた頃、おもしろい会社があるなと岩谷技研のことを知ります。宇宙にも興味はある、夢がある仕事だと惹かれるものもあり、採用試験を受けてみました。

設計、企画、プランニングをし、実際に作って、動かしてみる。思い描いたものができあがった時が楽しいと笑顔でお話ししてくれました。

そんな橋本さんが作ったものを見せてもらいましたよ。

 

天井弁の開閉を制御するスイッチボックス

今回、見せていただいたのは開放弁の開閉動作を遠隔操作する装置です。無線基盤の中の電気の部分は山本さんが担当し、電子課として共同作業で開発しました。

「このスイッチボックスから電波を無線で飛ばすのですが、動作がわかりやすいようにLEDで光るようにして、開いた時には、音が出るようにもしたんです」

岩谷技研のロゴも入っていて、未来的なデザインがかっこいいですね!

「最初は余力がなく、まずは動けばいいと考えて、デザインは度外視してました。
でも、テレビの取材なども入ることがあるので、写った時にかっこいい方がいいと考えて、デザインにもこだわるようになりました」

使いやすさのほかに、カッコ良さも意識してデザインを考えるようになったのは、岩谷技研の制服や、江別気球工場内の機能的かつ美しいデザインやカラーなどの影響もあるのだとか。

 

そもそも、橋本さんご自身も木工品を作るのが趣味で、自宅に工作部屋があり、希少木材を使って作ったペンや指輪などの作品の写真も見せてもらいましたが、どれも素晴らしく美しいものでしたよ!

ところで「自宅に工作部屋があるなんて、すごくないですか?」という話から、橋本さんが気にしていることの話題となりました。

 

福島研究所の立ちあげのため福島へ行く

実は11月末から福島県の南相馬市へ行くことになった橋本さん、これから本格稼働する福島研究所をものづくりの拠点とすべく、立ち上げに尽力されています。

福島では、事務所に3Dプリンターやレーザー加工機などの工作機械関係の機材や工具を買ってもらうことをお願い中なのだと話してくれました。

「機材設備にかなりのお金がかかるので、見合った成果を出さないと!」と気持ちを引き締めているのだそうです。

お話を伺って思わずこちらもブルっと気合が入ってしまいました。きっと良い仕事をされると思いますので、岩谷社長!機材や工具の購入をよろしくお願いします!!